不安の滓

　里美と知り合うよりも前、俺は一人の女性と結婚していた。
　その女性の名前は愛子、少し嫉妬深い人だった。

　その性格が、俺達の結婚生活を破綻させてしまったと、時間を置いた今ならば冷静に思える。
　何しろ、俺が残業で帰りが遅くなった時でさえ「浮気してたの！？」と詰め寄ってくるような人だった。
　その嫉妬心は彼女の心の底に根付いていた精神病から来ているものだった――という事は離婚する段になって判明したことである。

　里美と知り合う一年前、愛子と離婚に至ることとなった日より数えて一ヵ月前のある日。
　俺たちは些細なことで喧嘩となり、それが刀傷沙汰にまで発展したことによって、遂には離婚に及んだのである。