アフタヌーンの秘薬
「すみません花山さん、お店にまで聞こえています……」
店舗の入り口から川田さんが顔を出した。花山さんの怒鳴り声はお店にまで響いているようだ。
「川田さんもきちんと確認してください。三宅さんにはまだ1人で予約を任せるには不安です」
「申し訳ありません……」
川田さんは頭を下げた。川田さんのせいではないのに責められてしまい申し訳ない。
「それと、次のシフトですが6日が休み希望とのことですが出勤できる?」
「すみません、6日はもう1つのバイトに入るのでこちらはお休みをいただきたいです……」
「そういえば掛け持ちしてるんだっけ。こっちの仕事がきちんとできないのは、そっちに気持ちがいってるからじゃないの?」
「どういう意味ですか?」
「龍峯の仕事を覚える気がないんじゃない?」
「そんなことはありません!」
思わず大きな声で言い返してしまった。確かに休みがほとんどなく働いているから集中力が落ちている。けれど仕事を覚える気がないなんて決め付けられたくない。
「じゃあ時間がありすぎてボケているのかしら? フリーターは時間に融通が利いていいわね」
これには頭に血が上った。花山さんにフリーターであることをバカにされているとはっきり感じた。怒鳴り返してやると口を開きかけたとき、「オフィスまで聞こえてますよ」と廊下側のドアから聡次郎さんが入ってきた。