アフタヌーンの秘薬
ドライヤーをカバンにしまおうとする私に「洗面所においてきなよ」と聡次郎さんは言った。
「でも、ここに泊まるのは今夜だけなんじゃないの?」
私の言葉を無視して聡次郎さんは私の手からドライヤーを取ると洗面所に持って行ってしまった。
気まずいままお茶を飲んでいる間に聡次郎さんは歯磨きを終えて、私が歯を磨き終わると寝室の明かりは消えて聡次郎さんがベッドに寝転がっていた。
どうしよう、と戸惑う私に「りーか」と寝室から呼ぶ声がする。
「あの、聡次郎さんお腹すかない? 夜食作ろうか?」
「歯磨きしたから何も食べないよ。いいからおいで」
「私ソファーで寝ますから……」
「梨香」
優しく呼ぶ声にはもう逆らえず、私はゆっくりとベッドに近づいた。聡次郎さんの横に寝ると背を向けて目を閉じた。
「こっち向いてよ」
そう言われても恥ずかしさが勝って聡次郎さんの方を見ることができない。じっとしていると聡次郎さんが動く気配がして、後ろから抱きしめられた。
「梨香」
甘い呼び声に上手く呼吸ができない。
ゆっくりと体を反転して聡次郎さんと向かい合った。暗くても聡次郎さんの瞳は真っ直ぐ私を捕らえていることがわかった。
「言っただろ? 次寝室に来たら寝かさないって」
そう、聡次郎さんは忠告していた。私もそれを覚えている。覚えていてここに来た。だから小さく頷いた。
顔が近づき自然と唇を重ねた。腰に回った聡次郎さんの手が徐々に下半身に下りていく感触に体が震えた。