アフタヌーンの秘薬
「俺に全部見せて」
「……はい」
その言葉を合図に聡次郎さんは私の上に覆いかぶさる。再び唇が私の唇を奪い深く貪り合った。
スウェットを脱がされて太ももに直に聡次郎さんの指が触れ小さく吐息が漏れた。Tシャツの下から手が侵入し、胸を包まれたときには体が跳ねた。
与えられる優しい刺激に体の全ての感覚は麻痺していった。
裸のままベッドで眠っている聡次郎さんを起こさないようにベッドから下りた。
休みだという聡次郎さんを寝室に残し、出勤の準備をしてエレベーターに乗った。
1階で止まるはずのエレベーターは10階のオフィスで止まり、開いたドアの前には麻衣さんが立っていた。
「あ、梨香さんおはよう」
「おはようございます……」
「あれ? 梨香さんが上から来るってことは……聡次郎さんの家にお泊りかしら?」
「いや、あの……はい……」
麻衣さんは私たちの付き合いを応援してくれているとはいえ、実際に聡次郎さんの部屋に泊まったことを知られるのは恥ずかしい。
「順調そうで良かった。この間結婚の話は全然進んでないって言ってたから」
「あれから話し合って、少しは進展しました」
「そう。本当に良かった」
心から喜んでくれる麻衣さんには私も感謝している。
「梨香さん、聡次郎さんと順調なら大丈夫だろうと思って言うんだけど……」
「はい」
麻衣さんは真剣な顔をした。
「栄のお嬢様が今日からしばらく龍峯を出入りするの」
栄のお嬢様、と何度か聞いた人物に首を傾げた。