アフタヌーンの秘薬
「すげーな。朝から頑張るじゃん」
「今度カフェで新作メニューの提案をするの。だから色々試作中」
採用されれば来年の春の販促商品としてカフェで提供できる。前回は提案する余裕がなかったけれど、今は生活が落ち着いてきた。思いつくのはお茶を使った商品だ。パンケーキの他にも既存の抹茶ラテをアレンジしたいと思っている。
「龍峯を辞めるからって、もうカフェ中心の頭なのかよ?」
「そういうわけじゃないけど、一応カフェで私の考えたメニューを楽しみにしてくれる常連さんもいるの。期待されてるうちは頑張りたいし」
前回社員の案を押しのけて採用された私のメニューは好評だった。今回も社員には負けたくない。
「ふーん……まあ俺も上手いのが食えるからいいや」
聡次郎さんはナイフでパンケーキを大きめにカットするとぱくりと一口で口に収めた。
「今日はカフェに出勤で閉店までいるね。聡次郎さんが休みなのに私は仕事で申し訳ないけど」
「じゃあ迎えに行くよ」
「いいよ。ちゃんとここに帰ってくるし」
カフェに出勤した日でも、今では自分のアパートよりもこの部屋に泊まることの方が多い。聡次郎さんの思惑通りの半同棲状態だ。
「夜遅いだろ。迎えに行くから駅のロータリーに来いよ」
「ありがとう」
自分勝手なように見えて私を大事にしてくれる。カフェからここまで遠くはないのにわざわざ車を出してくれるのだ。