アフタヌーンの秘薬
「完璧……」
「完璧か?」
思わず口に出てしまった言葉に聡次郎さんが首をかしげた。
「愛華さんが完璧だと思うのか?」
「うん……」
「俺は、愛華さんよりも梨香の方が優れてると思うけど」
「え、どこが?」
「料理とか」
聡次郎さんの答えに笑ってしまった。私が愛華さんより優れているものが料理だなんて、自分では納得できない。
「愛華さんの方がちゃんとしたもの作りそう」
「別にそんなこともないと思うけど。もっと他に梨香のいいとこ言えるよ」
「じゃあ言って」
私のお願いに聡次郎さんは困ったように笑う。そして私に近づくと優しく抱き締めた。
「言わない。それは俺だけが知ってればいいから」
「えっ、気になる! 教えて」
「内緒」
私の不満そうな顔に再度笑うと額に優しくキスをされた。
「梨香、ごめんね」
耳元で囁かれた言葉に軽く首を傾げた。
「どうして謝るの?」
「俺が頼りないから梨香を不安にさせてる。ごめん……」
ぎゅっと私を抱き締める腕の感触が心地いい。
「大丈夫」
聡次郎さんに言った言葉だけれど自分にも言い聞かせる。
「私は十分良くしてもらってます」
大事にされている。聡次郎さんで満たされている。
「でもね……」
私はとても言いづらいことを意を決して口に出した。
「聡次郎さんから愛華さんの名前を出されるの……なんか嫌だ……」
言ってから顔が真っ赤になったのが自分で分かった。
こんな子供っぽいことを言ったら聡次郎さんに呆れられてしまうかもしれない。恐る恐る顔を見ると聡次郎さんは笑っている。