アフタヌーンの秘薬
「ねえ、もしかして私にお弁当作らせてたのって……」
「料理の腕を見るため」
やはりそうかと納得した。
「梨香をお茶カフェに配属させようとはだいぶ前から考えてた。新商品のメニューも考えてただろ? どうせならその案もお茶カフェにいただく」
この人はどこまでもワガママで自分勝手だ。思わず口元が緩む。
「私、まだ龍峯にいていいの?」
「ああ。お茶が好きだというのなら、まだ俺のそばで働け。永久就職な」
「嬉しい……」
龍峯のカフェに勤められるなら文句などあるわけがない。
「よかったですね。奥様に結婚を認めてもらえて」
「金……受け取らなかったの?」
「はい。いりませんから」
お金をもらって生活に余裕ができたって、そばに聡次郎さんがいなければ私の人生にもう意味なんてない。
「不安だったんだ……」
聡次郎さんは更に強く私を抱き締めた。
「俺たちだって契約を始めたきっかけは金だから、いつか母さんが梨香に金を渡すんじゃないかって不安だったんだ……」
過去の恋人にお金と引き換えに別れさせられたという聡次郎さんは、きっと同じような展開に怯えていたのかもしれない。
「もう……また私を信じてくれなかったの?」
「ごめん」
聡次郎さんは本当に反省している声を出し、私の頭を撫でた。