3度目のFirst Kiss
私は、部屋に入るとすぐに、着ていたスーツを脱ぎ、化粧も落とさないまま、ベッドに転がった。

身体がベッドに吸いこまれる様な感覚に襲われる。
ただ、このまま、眠るわけにはいかないと分かっているけど、身体は動いてくれそうにない。

天井を見上げながら、今日までのことをぼんやりと思い返す。

私、どうして今、大阪のホテルにいるんだろう?

ここに来るまでに、何度も断るチャンスはあったのに。それでも、今、ここでこうしている理由。

重い身体を起こしたものの、疲れ過ぎているのか、コンビニで買って来たおにぎりに手を付ける気にはならない。
お茶だけ飲んでシャワーを浴びることにした。
シャワーを短めに済ませて、最低限のスキンケアだけをして、髪を乾かしている頃には、眠気も襲ってきた。

明日の朝も早いし、もう寝よう。
余計なことは考えない!と自分に言い聞かせて、ベッドに潜り込んだ。

アラームをセットするために、枕元に置いたプライベートの携帯に手を伸ばす。

そう言えば、朝の新幹線以来、自分の携帯を見ていなかったな。

画面を開くと、奈緒子から何件かSNSのメッセージが入っていた。
彼女は、今日も仕事を休んだようだ。

奈緒子は家でモヤモヤしてたんだろうな。悪いことしちゃったな。

でも、メッセージの最後には、彼女らしく「返信不要」と書かれていた。

仕事に関しては問題なく進んでるし、だからと言って、川口さんの話を始めると寝る時間がなくなりそうだ。

明日、展示会の様子を伝えるのを兼ねて、電話をしてみよう。

そう思って、携帯を閉じて枕元に戻すと、部屋のチャイムが鳴った。
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