恋はたい焼き戦争


いつもより早く終わった結納の打ち合わせの後、どうしても勇輝君といるのが苦しくてすぐに部屋を出た。


部活終わりの学生がちらほらと楽しそうに歩いている。


私もこの前まではそっち側だったのにな…


今はどうしてこうも…心がすさんでいる。





「…鈴ちゃん?」

「え、匠さん…!」





そんな私の前にひょっこり顔を出した匠さん。


久しぶりに会った彼の穏やかな顔を見て何故か泣きそうになった。





「…どうしたの?」





そんな私を心配して、匠さんは私の肩に触れてくる。


手のひらから伝わる体温が暖かい。





「私…」





思わず言ってしまいそうになる。


匠さんの暖かさに緩んで本音が漏れてしまいそうになる。





「…いや、なんでもないです…」

「鈴ちゃんは僕や昴、慎ちゃんのこととか部活のみんなのこと大切に思ってるでしょ?だけどさ、それはみんなも同じなんだよ」

「…」

「鈴ちゃんが元気ないって、部活にも来てないって…みんな心配してたよ」

「…すみません…」





学校の違う匠さんにまで心配かけて、本当に何やってんだろう。


みんなともう、あと少ししかいられないのに…





「…っふ、…ぅ…っ」





情けなくて、申し訳なくて私は初めて人前で泣いた。


一瞬驚いた匠さんは、それでも優しく私の頭を撫でてくれていた。
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