恋はたい焼き戦争
「明日が合宿最終日なんて…」
「海に来たのに…海に触ってすらいない…」
「マリンスポーツ……」
演劇に関して言えば、きっとすごくレベルアップはできたんだ。
…でもなんだろう、この虚無感は。
海に来た意味!って感情は。
「部長…流石に今日はもう…」
耐えきれなくなって、部長に直談判しに行く。
今は休憩時間で、いつもならこの後もう何時間か練習があるんだけど、みんなのこのコンディションでいい練習ができるとも思えない。
「…そうだな。
みんな!聞いてくれ」
私たちはぞろぞろと部長の周りに集まって輪になるように座る。
「今から!夏といえばの…怪談話大会を始める」
「か、怪談話…!」
一瞬でかえで君の顔が強ばる。
まーくんの動きも止まった。
「おおお!いいじゃん。俺好きだぜ、そういうの」
嬉しそうなのは昴だけで。
私は、ただただ放心状態だった。
「これは知り合いから聞いた話なんだけどな…」
部長は電気を消して、持ってきていたらしいロウソクに火を灯した。
それだけで一気にそういう雰囲気になる。
ああ…なんかもう…夏なのに背筋がスーッと寒くなってきたような………
生唾をゴクリと飲み込んで、私たちは心臓の鼓動が速くなっているのにも気付かず部長の話に耳を傾けた。