恋はたい焼き戦争


「なんだ?」

「ほらほら、昴も行く行く!」





背中をどんどんと押しながら、昴を一人用のバナナボートに乗せる。





「俺1人かよ!
暇だわ〜」

「…っ!
運転手さん!よろしくお願いします!!」

「はーい」





最初は余裕しゃくしゃくな表情だった昴も、どんどん船のスピードが上がると必死な顔になっていた。





「落ちろーーー!!」





そう。私がかえで君に耳打ちしたのはこのこと。


『かえで君がしなくても、運転手さんなら…ね?』


それを聞いたかえで君は急いで運転手さんに昴を落とすよう頼みこんだ、ってわけ。





「…ふぅ。
まあ、こんなもんだな」





やっとの思いで帰ってきた昴の髪は風でボサボサになっていて、落ちはしなかったものの相当なしんどさを感じさせた。





「くそぅ…
何で落ちないんだよ!」

「…それが俺とお前の違いだろうな?」





ふふんと胸を張る昴の前に、今度はまーくんがスマホを突き出した。





「紺野 昴。バナナボートで必死の巻」

「は、はあ?!!おまっ、なんでこんなの撮って…!おい、消せよ!!」





まーくんが見せたのは他でもない、昴の写真。


ナイスショットの連続。


風に負けじと、落ちるもんかと必死な表情。

普段の昴からは見られない乱れた表情。


隣でやたらと真剣にスマホと向き合ってるなと思ったら写真を撮ってたのか。





「…ふふっ」

「おい鈴!何笑ってんだ…って風間!邪魔するな!」





昴の写真に対して笑ったわけじゃないんだけどな。


こんなふうにじゃれあってるのがね、いい雰囲気だなって。


かえで君とはいつも険悪な空気になってしまうけど、結局2人は仲が悪いわけじゃない。


だって、仲が悪かったらこんなに楽しそうにはしゃげないでしょ?


まあ、本人たちに言ったら


「そんなわけない!」


って言うんだろうけどね。
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