恋はたい焼き戦争


「…なんで。
どうして兄貴が写った写真はねえんだよ?」

「昴。
ずっと隠してたことがあるんだよ」





そして、匠さんは穏やかに秘密を打ち明けた。


自分が昴の代わりの跡継ぎとしてやってきたこと。

そのために森ノ宮学園に編入させたこと。


匠さんは、話しながらも笑顔を繕っていた。


…とても不自然な、きごちない笑顔を。


きっと笑顔を作っていないと、最後まで話せなかったんだろう。


必死に、昴に伝えていたんだろう。


私は声が震えている匠さんの手に自分の手を重ねて、大丈夫だと言わんばかりにエールを送っていた。


秘密を話すこと、明かすことは並大抵の勇気と覚悟じゃできない。


それくらい、大変なことだって。


しんどくて、つらいことだって。


…私は知っている。



だから、目の前で頑張っている人のことを放ってはおけなかった。


少しくらい力になりたいって、今この瞬間だけは。
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