恋はたい焼き戦争


「あんなの、勝手すぎる。兄貴はそれでいいのかよ?
俺が逃げる代わりに兄貴が紺野家の跡を継ぐ?
兄貴だって辛いはずなのに、必死に耐えて…そんなことも俺は何一つ知らないでへらへらして…」





あまりのことに頭が混乱しているのか、感情が怒りと悲しさと悔しさとを行ったり来たりしている。


私はそんな昴の背中を擦りながら、泣きそうな顔を見ないように語りかけた。





「匠さん、昴のことが大事なんだよ…自分の身を差し出すほどにさ。
でも昴だって匠さんのこと大事に思ってる。そうでしょ?
だったら、ちゃんと2人で話し合うべきだよ」





こんなにも2人は傷付いている状況なのに、跡取りって必要なの?


…必要なんだよね。


だから、こんなに悩んでる。


…きっと、私もその1人。


親を悲しませたくない。

繁栄させたい。自分のせいで潰したくない。

だって、それはお父さんが頑張った証だから。


お母さんが支えて、自分たちを養うためにお父さんが頑張ってくれた証だから。



私たちは自由なように見えて、実はいろんな鎖で繋がれているんだろう。





「紺野家に生まれなければ…こんなことにならなかったのにな」

「そんなこと言わないで。
そうじゃなかったら、私は昴にも匠さんにも会えなかった。過去より、これからのことをちゃんと考えないと…ね?」





それでも、まだ家に帰れるような雰囲気じゃなかった昴と共に私も少しだけ波のゆくさきを見ていた。
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