Drinking Dance
私、変だ…。

35年間彼女ができたことがなかった星崎さんに彼女ができて嬉しいはずなのに、それを素直に喜ぶことができていない。

それどころか、星崎さんの口から彼女の名前が出てくるたびに胸がチクリチクリと痛くなっている。

自宅へ向かうために最寄りの駅へと歩いているけれど、その足取りは自分でもわかるくらいに重かった。

ゲイ疑惑だ熟女好き疑惑だと影でさんざんと言っていいほどに噂を立てられた星崎さんに彼女ができたと言うのに喜べない。

「嫉妬してるのかな…?」

彼女ではなく、星崎さんに嫉妬しているのかも知れない。

今の今まで彼女ができなかった星崎さんを自分と同じ仲間だと、心のどこかで思っていたのかも知れない。

私と彼は違うんだからと自分に言い聞かせて、ようやく彼女ができたことを素直に喜ぼうと思った。
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