ベル姫様と溺愛ナイト様
「心配じゃねぇのか?
お姉様?」

「ははっ。お前こそ。
お兄様」

二人は強い酒と氷の入ったグラスを、カラカラと手で弄びながら軽口を叩き合う。
つまみにだしたチーズを一つ頬張り、おもむろに口を開いたのはメロゥだった。

「ま、レイは大丈夫だ。
あいつの一番恐れることは、ベルちゃんを失うこと、だからな。
嫌われるようなことは絶対しないだろ」

一度失ってしまって、幼いながらに後悔し続けた日々。
レイは、とにかく姫を取り戻したくて必死だった。
見つけた暁には、もう二度と失わない、大事に大事にする、と日々決意を固めていたことを、メロゥは知っている。
そんな彼が今になって、姫が酔ってるから、と何かをするとは到底思えない。

「まぁな。
付き合いは短すぎるってほど短いが、あいつはベルが嫌がることなんてしないな、絶対。
だから大丈夫だろ。
ま、呑むか」

ジェミロも笑っている。
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