白い雪が降り積もるように
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それから数時間後。
私は蓬條依良の部屋に来ていた。
その私の手には大きなキャリーケースが一つ握られている。
「どうしたの、そんな大きな荷物抱えて?まさか、辞めるとか言い出さないよね?」
カウチの上で寛ぐ彼は身体を起こすと、膝の上に頬杖をついた。
「そのまさかですよ」
「……本気で言ってるの?」
「はい。私はもう貴方の世話に疲れました。蓬條への復讐も諦めましたし、辞めさせて頂きます」
「俺は認めないよ……」
「貴方が認めなくても、紗良様の同意があれば可能です。それでは」
彼の顔を一度も見ず、一方的に退職を告げると部屋を出た。
これで良い……。
貴方が幸せになれるなら私は貴方の傍からいなくなることを選ぶ。
たとえ、私が一人になっても──。