【完】『轍─わだち─』

そういったなか、年が明けた。

ひさびさに休みがとれたつばさは、まりあと耀一郎と三人で鎌倉まで初詣へ出掛けた。

折しも箱根の駅伝の復路の日で、保土ヶ谷のあたりの車窓からの陸橋は、ランナーを一目見ようとする人だかりでいっぱいになっている。

「駅伝かあ」

まりあは呟いた。

「あれって、関東の大学だけだよね?」

京都で生まれ育ったつばさには、何の感動もない。

「ま、それを言ってしまえば、うちの大学も駅伝には縁がないから、何の興味も湧かないけどね」

耀一郎は言う。

「でもうちの親戚で箱根にエントリーされたってのがいて」

「そうなんだ」

「そいつはケガで走れなかったけど、陸上で長距離を走る学生にとっての箱根ってのは、高校野球の甲子園みたいなもんらしい」

耀一郎いわく、いわゆる憧れみたいなものらしいのである。



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