ほしの、おうじさま
人によっては「誤解のないように黒く染めておけ」と言われてしまう場合もあるだろうけど、見るからに優等生、好青年の彼のキャラクターからして、そんなものは全く何のハンデにもならなかったようだ。
まさしく「王子様」然としている風貌の彼に対し、現時点で恋心まで抱いているかどうかは定かではないけれど、思わず視線が釘付けになってしまう気持ちは痛いほど良く分かる。
誰だって綺麗なもの、美しいものには目を奪われてしまうものだ。
別に彼は私だけのものではないのだし、皆さんにもこの機会に思う存分これでもかとばかりに愛で倒してもらいたい。

なんて事を考えている間に彼のスピーチは終わり、その後も恙無く粛々と式は進み、予定通りお昼前には閉会した。
私達は会場案内の係を任されている先輩社員の指示に従い順々に席を立ち、出口を目指す。
何せ数千人が集まっている訳だから、各々が好き勝手に帰り始めたら大混乱に陥ってしまう可能性大なので、アイドルやアーティストのコンサート時の警備システムを参考に誘導係を配置したのだろう。
いやもちろん、さすがにそういうイベントに比べたらこちらの方がスケールは小さいけれど、とにかくそれだけの人数を効率良く捌く為の対応策が取られたのだ。
今日は入社式のみで、私達はこのまま解散して良い決まりになっていた。
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