ほしの、おうじさま
大塚さんに「定例会議用の報告書、ここまで処理しました」と説明していた私は、ふいに自分の名前を出されて『ん?』と思いつつ渡辺さん達の方へと視線を向けた。


「ああ、星さん。その引き継ぎが終わったらちょっとこっちに来てもらえるかな?」


渡辺さんもちょうど私を見た所で、目と目がかち合ったのと同時にそう指示された。


「これから高橋さんがクレームの回答をするから、今後の参考に見ておいてもらおうと思って」

「あ、はい。分かりました。えと…」

「私の方はもう大丈夫よ」


渡辺さんの言葉を受けて、私がちょっとアセアセしていたら、すかさず大塚さんが笑顔でそう言って下さった。


「この日のデータから引き続き更新してプリントアウトして行けば良いのよね。どうもありがとう」

「あ、はい。それでは失礼いたしまして…」


そう断りを入れてから私はその場を離れ、急いでお二人の下へと近付いた。


「じゃ、高橋さんお願いします」

「よ、よろしくお願いいたします」

「ん」


渡辺さんと入れ違いに席に着き、早速メールの文面を確認していたのであろう高橋さんは、渡辺さんと、少し遅れて繰り出した私の言葉にコクリと頷きながら短くそう声を発した。

次いで、オペレーター専用機器を頭に装着し、しばし画面を見つめ続けた後、いよいよお客様へと架電する。
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