ほしの、おうじさま
私の主張の途中で野崎さんは顔を真っ赤にして震え出した。

「それに、人生には抗う事のできない『流れ』っていうものがあると思う。不本意ながら派遣になった人はもちろん、自ら選択してそうなった人も、その時はその流れに身を任せるしかなかったんだよ。つまり野崎さんも私も、もしかしたらいつの日か、何らかの理由で正社員ではいられなくなる時が、そう選択せざるを得ない時が来るかもしれない。その可能性はゼロではないんだよ?」

「……つくづく生意気よね、あんたって」

すると野崎さんは心底憎々しげにポツリと呟いた。

「普段はトロくさくてビクビクしながら周りとコミュニケーションを取っているくせに、突然そんな風に強気で意見したりして来るんだもの」

怒りに満ちた眼差しで、私をジッと見据えながら。

「それに男に対してはこれでもかとばかりに媚びを売りまくるしね。ほんっと、油断のならない女だわっ」

そして足早に歩き出し、私の右肩にわざと接触しながら傍らをすり抜けると、そのまま部屋を出て行った。
しばしその場で固まってしまっていた私は深いため息を一つ吐いた後、ノロノロと自分のロッカーに向かう。

扉を開け、一旦はケータイを取り出したものの、今のやりとりで思いの外時間を浪費してしまっていたし、精神的にも友人へのほのぼのメールを打てるような余裕はなかったので、結局すぐにバッグに戻した。
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