ほしの、おうじさま
無事に退室できた時に『今までの人生の中で、今日が一番頑張ったよね、私…』という尋常じゃない達成感に包まれた事だけは覚えているけど。

「皆さん、申し訳ない」

面接を終えた者から順に帰るように言われていたので、同じグループだった5人と自然の流れでエレベーターホールへと移動し、箱に乗り込んだ所で、彼、星野君はすぐさま全員に向けて謝罪した。

「親がノリでこんな名前を付けてしまって…。一応「お天道様の当たる明るい道の真ん中を、威風堂々と突き進め」っていう意味が込められているらしいんだけど、僕のせいで皆さん笑いを堪えるの大変だったでしょ?」

「そ、そんな!」

操作パネルの前に居た私は勢いよく振り向き、背後の彼に向けて真っ先に返答した。

「別にあなたに罪はないし。っていうか、その由来を聞いた今となっては、笑いそうになったこちらがむしろ恥ずかしいよ」

「そうだよね。ご両親の愛が込められた、とても良い名前だと思う」

「うんうん。なかなか洒落がきいてる」

すぐさま他の女子も賛同する。

「まぁ、結局は誰も吹き出さなかった訳だし。かえって忍耐力があると評価されたんじゃないのかな?」
< 2 / 241 >

この作品をシェア

pagetop