ほしの、おうじさま
「俺なんかそれまで顔がひきつって仕方がなかったのに、アレを聞いた瞬間に自然な笑顔が浮かんで来て超リラックスして面接官とやり取りできたもん。むしろ助かったよ」

男性陣もそうフォローし、その場はとても和やかなムードに包まれた。
それを感じ、私は心底嬉しくなったのだ。

私の場合、度胸試しというか、ダメで元々で試験を受けに来ていたので、星野君に対して寛大になれた部分があるのだけれど、まさか他の人達までそれに続いてくれるなんて。
キリッとしてて凛としてて、見るからに『デキる』って感じの、実際に名のある大学に通っている、同学年ながら『この人達は今までもこれからもエリート街道を突っ走って行くんだろうな』というタイプのその方々が、誰一人として星野君を責めるような事を言わず、むしろ絶妙なフォローを返している姿を見て、その心意気に感動を覚えたのだ。

いや、それではまるで「優秀な人は冷たい」と言っているようなもので、とても一方的で失礼で乱暴な考え方だけれども。
とにかくそれまでの自分の努力が実を結ぶかどうかの、人生を左右する重要な場面だった訳で、緊張と焦りから、ついつい星野君に対して八つ当たりのような発言をしてしまう人がいても不思議ではなかったのだ。
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