ほしの、おうじさま
私の反論を押さえ込み、阿久津君はきっぱりと言い切った。

「間違った方向に進みそうになっている奴に正論をバンバンぶつけて軌道修正を促す、この上なくお節介でウザったい『正義の味方』キャラがな」

ぶっきらぼうな言い草とは裏腹に、阿久津君の眼差し自体は意外にも穏やかなものだったりしたので、私は思わずドキリとする。

「すこぶる暑苦しくてうっとうしいけど、そういう奴がいるからこそ、何とかこの世界は成り立っているんだから。皆が皆、自由気ままに好き勝手に動いてたらしっちゃかめっちゃかになっちまうだろ?」

「え、えと…」

「それに、とりあえずお前は本物だし」

「……え?」

「『偽善者』ってのは『偽者の善い人』っていう意味なんだから。だけどお前はいつも正真正銘、善意だけで相手に向き合ってるじゃねぇか」

そこで阿久津君はちょっと意地悪な笑みを浮かべた。

「まぁ、いかんせん超絶に鈍臭くて不器用だから思いっきり空回りしまくってるけどな」

「んなっ」

「とにかくこれからも世の為人の為、しゃかりきにがむしゃらに一人クルクルと回り続けて生きて行けよ。それが現世でのお前の使命なんだろうから」

「あ、阿久津君、内心面白がってるでしょ!」

そう抗議した後、「まったくもう…」と呟きながら私はさりげなく彼から視線を逸らした。
そのまま見つめ合っているのが何だか耐えられなくなってしまって…。
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