ほしの、おうじさま
しばしその状態でぼんやりと過ごした。

……っていうか私、ずっと憧れていた人に告白をされたっていうのに、何でこんなに疲労困憊してるんだ?

自分で自分のメンタル状態に首を傾げていると、勢い良くドアが開き、どこかの部署の先輩社員が入室して来た。

どうやら固定勤務の方達も定時を迎えたようだ。


「お疲れ様~」

「あ、お、お疲れ様です」


挨拶を返しながら、私は慌てて立ち上がる。

いけない。
これからここは混雑してくるだろうし、いつまでものんびりと居座っている訳にはいかない。

私は自分のロッカーに向かうと手早く帰り支度を済ませ、部屋を出た。

途中化粧室に寄ってからビルを出て、相変わらず疲弊状態の己の体と精神をなだめすかしつつ最寄り駅を目指す。


「おい」


しかし、数百メートルほど歩いた所でいきなり後方からそう声をかけられ、歩みを止めた。

とても聞きなれた、常時無愛想で不機嫌そうな低音ボイス。


「やっと捕まった」


私は勢いよく振り向き、その声の主…阿久津君に向けて言葉を返した。


「な、何よ。なんか用?」

「『なんか用』じゃねーだろが。あれ以来、あからさまに俺のこと無視しやがって」


阿久津君は私と距離を詰めながら抗議して来た。


「無視って…。元々私達、そんな頻繁に会話してた訳じゃなかったでしょ」

「目が合いそうになったらマッハで逸らして、挨拶さえもスルーしてただろうが」
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