ほしの、おうじさま
「別に職場で私と話せなくたって何ら問題はないじゃない」

今のとこ仕事上での関わりはないんだから。

「あんな別れ方をしたら気になるだろうがっ」

すると阿久津君は、それまでのイライラしたものではなく、若干気まずそうな口調になって続けた。

「女を泣かせちまったなんて、超絶に後味が悪いし…」

微妙に視線を逸らしながら会話を交わしていた私は、そこで思わず阿久津君の顔をガン見してしまった。
声音同様、表情も何だかとても神妙になっている。
あれからずっとその事を気にしていたのか…。
阿久津君て意外とジェントルマンだったんだな、と妙に感心してしまった。

…いや。
ホントはとっくに気付いてる。
阿久津君はぶっきらぼうで冷たいように見えるけれど、本当に弱っている人を傷つけたりはしない。
奈落の底に突き落としたりはしない。

「……もういいよ」

言葉通り、私の中にあったわだかまりは瞬時に消え去った。

「あれは阿久津君からの攻撃によるものじゃなくて、これまでの自分の人生への悲哀に対して出てしまった涙だから」

「……ホントか?」

「うん」

コックリと頷いてから私は続けた。

「それにようやく私、『その他大勢』人生からは抜け出せそうだし」

「え?」

「今日私、星野君に告白されたんだ」

「は!?」

「最大級に難易度が高い、叶う筈がないと思っていた願いがあっさりと成就してしまったんだよね」
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