ほしの、おうじさま
☆☆☆☆☆☆
自分でも正体の分からない、モヤモヤしたものを抱えながら数日過ごしているうちに暦は5月に突入していた。

そして明日からはゴールデンウィーク。

土日との連係がうまいこといって5連休となるので、この機会にレジャーを楽しむ方が多いらしく、社内の人々は皆何となく浮き足立っていた。

しかし私は何の予定も入れていない。

入社して一月後なんて、最も心身共にグッタリしている時だろうと予想し、ただひたすらぐうたら過ごすつもりでいたのだ。

結果的にその判断は大正解だった。

こんな精神状態じゃ、何をしても楽しめそうにないし…。


「連休が明けたらいよいよ星さんも一人立ちだね」


自分の世界に入り込んでいた私はそう声をかけられ、ハッと我に返った。

と同時に自分が置かれている状況を思い出す。

会社に出勤し端末を立ち上げ、朝のミーティングに参加していたのだけど、いつの間にやらそれは終わっていたらしい。

課長のお話を上の空で聞いてしまい、内心『まずい…』と冷や汗をかく。


「は、はい。そうなのですよね」


せめてこの後はきちんとしておこうと、私はお話を振って下さった渡辺さんに視線を合わせ、返答した。


「何だか心細いです」

「星さんなら大丈夫だよ。この一ヶ月の間、色んな事をスイスイ吸収して行ってたもん」


渡辺さんは笑顔で続けた。
< 226 / 241 >

この作品をシェア

pagetop