ほしの、おうじさま
「と言っても、ホントに一人で放り出すって訳じゃないからね。これからも当然俺達が色々とフォローして行くし。だからじゃんじゃん頼って来て」

「はい。ありがとうございます」


そしてそのまま私達は通常業務へと突入したのであった。


「星さん」


11時を過ぎた頃、課長が私のデスクへと近付いて来た。


「そろそろ会場準備に行ってもらっても良いかな?」

「あ、はい。分かりました」


本日13時15分より、宣伝部と企画開発部、そして上層部が参加する合同会議が開かれる予定で、その準備をするよう事前に言い渡されていた。

机上や椅子をざっと拭いたりプロジェクターを用意したり。

そして会議が始まる直前に資料を配ってお茶出しをし、終わり次第後片付けもする。

どれだけ時代が移り変わっても会議の形態というのはそうそう変化するものではなく、そしてやはりその準備は新人が担うことになるのである。

しかしそれに関して私は全く不満等はない。

会場準備は先輩に何度か教わっているので動き方はもう分かっているし、多少の肉体労働は気分転換になるのでむしろ大歓迎だ。

ただ、今回に関しては不安要素が一つあり…。

管財課で会議室の鍵を受け取り、エレベーターで上階を目指しながら悶々と考える。

いや、一週間前に課長より指示を受けた際はかなり浮かれはしゃいでいたのだけれど。

宣伝部と企画開発部の合同会議で、なおかつ新人が会場準備をするのが通例という事はすなわち…。


「あ、星さん」
< 227 / 241 >

この作品をシェア

pagetop