ほしの、おうじさま
「どちらかというと私達、いつも口喧嘩ばっかりしてるもんね」

「そうそう」

そこで阿久津君はふと何かに気付いたような表情になった。

「でも…。そんな風に誤解されちまうなら、これからはあんまり二人きりにならない方が良いかな」

「え!?」

「この前星野にも同じような事を言われたし。これからお前達は付き合う事になるんだろうから、うかつな言動は慎んだ方が良いぞ。そして俺も自重する。彼氏に疑われたりしたら嫌だろ?」

私は何も言葉が返せなかった。

「さてと、いい加減帰るとするか」

そしてそう言いつつさっさと歩き出した阿久津君の後を、無言のまま付いて行く。

「俺が利用してる停留所はあっち側だから、ここで渡っちまうわ」

公園を出て左手に進み、一つ目の交差点に差し掛かった所で阿久津君はそう宣言した。

「じゃあな」

「あ、うん…」

私が答えている間に阿久津君は横断歩道を渡り始め、瞬く間に向こう側へと行ってしまう。
しばしその場でぼんやりした後、私も歩き出した。
ひたすら黙々テクテクと、一心不乱に歩を進め、最寄り駅へと向かったのだった。
< 225 / 241 >

この作品をシェア

pagetop