ほしの、おうじさま
ガタガタと席を立つ皆の姿を横目で見ながら鞄の口を開け、マイ水筒を取り出す。
これがあるから飲み物は買いに行かなくても良いや。
トイレはどうしようかな…。
今のとこ特別行きたいとは思わないけど。
どうせあと1時間半後にはお昼だし、それまでは余裕で持つハズ。

「星さんてマーケティング課だったんだね」

などと考えつつ水筒を机上に置いた所で、話しかけるタイミングを見計らっていたらしい野崎さんが問いかけて来た。

「え?あ、うん」

「あそこって超大変らしいじゃない。面接の時に説明されたもん。お気の毒~」

彼女は何故だかクスリ、と可笑しそうな笑いを挟んでから続けた。

「でも、これで謎が解けたわ」

「え?」

「言っちゃなんだけど、あなたの出身大学ってそんなに全国的知名度はないじゃない?それなのに、他にうじゃうじゃ居たであろう有名大学出身者をことごとく蹴散らせてここに入れたんだーって、とっても不思議だったんだ。でも、苦情処理係として採用されたならすんなり納得。皆が敬遠する仕事も、喜んでやるだろうって判断されたんでしょうね」

「あ…。うん…」

私は愛想笑いを浮かべつつ、無難に言葉を返した。

「一所懸命やらせてもらおうと思ってるよ」

そしてすぐさま立ち上がる。

「えっと、私、おトイレ行ってくるね」
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