ほしの、おうじさま
そこの試験を受けたというだけで箔が付くというか、世間は勝手に優秀な学生だと誤認してくれるかもしれないし。
この上なく図々しく、打算的である事は百も承知。

とにかく分不相応である事は充分認識していたし、受からなくても別段落ち込みはしないだろうと気楽に構えていたのだけれど、『こんなに思いやりのある素敵な人達が多く集まって来る会社なんだ…』と思った途端、考えが違う方向に向かい出した。

そして極めつき。


「ありがとう皆さん。そう言ってもらえると気が楽だよ。これからの試験、お互いに頑張って行こうね」


星野君に爽やかスマイルでそう言われた瞬間に『やっぱり受かりたい!』と切実に思った。
こういう方達、特に爽やかさ100%の星野君と、0to0で一緒に仕事をして行きたいと。
おそらく大きく飛躍して行くであろう彼の姿をリアルタイムで眺めたいと。
要するに私は彼のその笑顔に速攻でフォーリングラブしてしまったのだ。
『恋には落ちたけど試験には受かりたい』的な。
いや、0to0統括部は一つの県に一ヶ所以上設けられていて、更にいくつも部署が分かれているのだからお互いに無事採用されたからといって同じ場所で働けるとは限らなかったのだけれど。
とにかくその瞬間そう思ったのだ。
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