ほしの、おうじさま
そして私は星野君との出会いに、勝手に運命的な物を感じていた。
何故なら私のフルネームは星七織。
七月七日生まれで、「ほし」という名字とうまいことリンクしているし、その日に誕生した事を最大限にアピールしたいと両親は考え、悩みに悩んだ末「七夕」のヒロイン「織姫」様をイメージして「ななお」と名付けた。
つまり星野君と私は「星」かぶりで、なおかつそれぞれが王子様とお姫様の意味合いを持つ名前の持ち主なのだ。
なんとドラマティックでロマンティックな符号であろうか。

それまでは、妙に凝りすぎていて、平凡で地味な自分のキャラにはそぐわないその名前がすこぶるこっ恥ずかしく、コンプレックスを感じたりしていたのだけれど、ゲンキンなもので、星野君との共通項に気付いた途端に世界観が変わり、両親に対する感謝の念が沸き起こって来た。
そして、その時抱いた私の願いは、見事叶えられる事となった。
大学合格に次ぐ、人生で二度めの、そして最大級の奇跡。
もうこれで、現世で私に宛がわれていた運はすべて使い果たしてしまったかもしれないけれど、それでも良いと思えるくらいに幸せなことだった。

翌年4月、私は彼と共に、晴れて、0to0統括部東京本部の社員となっていたのであった。
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