libido
貴方との時間はいつだって夢の様だった。

そんな夢での貴方は常に王子様だった。

スポーツブランドのジャージ、イギリスブランドのスーツ、ドイツ製の車、どれも品があって、洗練されていた。

だから余計に貴方を深く知りたいとは思わなかった。

実はそのジャージは偽物の安物だとか、スーツはリサイクルショップの物だとか。

もしかしたらこれらの事は私以外の他者から見たら、どうでも良い事柄かもしれず。

けれど私には、大切な事柄で。

そんな事実があったとしたら、それを知った瞬間私はこの夢から覚めてしまう。

少女がアイドルに夢中になるような感覚と同じ。アイドルの素性を知らない少女は雑誌やテレビで見るその姿を鵜呑みにして夢を見て空想を抱く。

それと、同じ。

真の部分は知らなくて良い。
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