libido
私と違ってビジネスバッグ以外何も手にしていない彼の手元を見て、少しだけ落胆している自分はどこまでも人間じみていた。

期待した自分を蔑み、期待させた彼を恨みがましく思った。

「そんなに待ってないよ。行こうか」
「はい」

あの日、ワインバーにいた私に届いた彼からのメールはクリスマスの誘いを告げるものだった。

ワインを気管に通したほど盛大に驚いたのは、会えないと確信していたからだ。
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