libido
「これ以上貴方を好きになりたくないの」

それは初めて明かした私の想いだった。

裸のまま抱き合う中、そっと言葉を洩らした私に彼は笑った。

「何が可笑しいの?」
「誤解してる。既婚者じゃないよ、俺」
「・・・え?」

驚く私を余所に彼はクスクスと笑い続ける。

「まさか既婚者だと思われていたなんてね。けど納得できたよ。君があんなことを言い連ねた理由が」

肘枕をしながらこちらを見下ろした彼は、そっと私の顔にかかる髪を除け、頬を撫でる。

「なら、貴方は私が何を知っていると思ったの?」
「・・・既婚者では無いんだけど、経験はある。もう二年以上も前の話だけどね」

それで私も納得が出来た。

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