黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
その言い方になんとなく面白くないな、と引っかかりながらも、私は大きく頷いた。
「うん、言葉としては知ってたけど自分の目で見たのは初めて」
「やっぱりこういうところは駄目か?」
「ううん、なんか想像してたよりずっと良いところ、かな。何て言えばいいんだろう・・・この雑多な感じに溶け込んで私が私じゃないみたいな感じがする」
何と言えば感覚とぴったり来るのだろうと考えながらたどたどしく呟くと、ヘリオトロープが小さく笑った。珍しく邪気の含まない笑みで。
「こういう所にいると他人との隔たりが薄くなったような気がして、自分が世間に溶け込めているように感じるんだ。それを感じたくて来る。ここに来てる奴らは皆そうだ。
ここはそういう場所だ。皆大小はあれど・・・自覚はしていなくてもなんとなく普段疎外感を抱いているものなんだろうよ」
俺も例外では無いけどな、と小さな声で付け足してヘリオトロープはテーブルに置かれた水差しからコップに水を注ぐとぐいっと煽った。
「そっ、か・・・」
その言葉は何故かすとんと胸に落ちた。
確かに1人で飲んでいる人は見る限りいない。
年代を問わず性別を問わず笑い合う人たちを見ていると、ここは人々が日常的に孤独を癒すことが場所なのだと私にも察することができた。
仏頂面に戻ったヘリオトロープがまた水差しを手に取りながら私の顔を見ずに口を開いた。
「・・・まあ、お気に召したようで何よりだ」
知らぬ間に表情が柔らかくなっていたのだろうか。
そういえば起きた時よりは自分でも言葉数が増えている気がする。