黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

「わかりますよ、順番に。

そして、いつかは・・・“全て”が。

でも、このセカイには、知らなければ良かったと、そう思うことが沢山あります。

これからアナタも、何度も何度もそう思うでしょうね」

話しながら、その人はするすると近づいてくる。

怖い。でも、動くことが出来ない。


その人との距離が零に近づいて―――目が合う。

「ひ・・・!」

目じゃ、ない。

私が目だと思ったものは、描かれたただの円。

その人は、道化師の仮面を、着けていた。

私が恐怖に遂に顔を引き攣らせると、動かないはずの道化師がにいっと口の端を吊り上げたように見えた。

そして、がっ、と顎を片手で掴まれる。

「―――!?」

容赦の無い、とても、強い力で。

―――この人は、男だ。本能的にそう理解した。

唇が小刻みに震えるだけで、何も口から出ない。

道化師は私の顎を固定したまま、首筋に顔を寄せた。

言いようのない嫌悪感と恐怖がぞっと背筋を走る。


もし仮面がなければ息がかかっていたであろう近さで、男は囁いた。

「ワタシは、アナタの時が進むのを、ずっと待っていたんです。それも、あと3日―――・・・ああ、長かった」

3日?3日後に、何があるというのだろう。

何かを忘れている気がするけれど、何だったか。

頭がぼやけて、わからない。

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