GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
祭壇にゆっくりと歩み寄った瀬里が、そこに置かれていたキラキラと輝くクリスタルのような器を両手で持ち上げた。

嫌な予感しかしない。

この、美しくカットされたデキャンタは、もしかして……。

祭壇へゆっくりと進んだ律と清雪が、そのデキャンタを見つめた。

「百年の時を経ても尚、美しい……」

「清雪様、先ずはあなたが直接藍の血を味わってください。その後ここに、ファシネイティングブラッドを」

清雪に血を吸われた後、このデキャンタに私の血を……。

教会に集まっている大勢のヴァンパイア達が、わずかに色めき立つ。

瀬里が相変わらず虚ろな瞳のまま、そのデキャンタを胸に抱いている。

「藍。清雪様のところに」
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