Sweet Hell
ラーメン屋を出て少し歩くと私はこの後どうしようかと思い、立ち止まった。
このまま浅草に戻り、人ごみの中で彼と一緒に歩くのは嫌だなと思った。
これ以上、周りの目を気にしながら彼のアプローチを受け、
恥ずかしい思いをするのは避けたいなと思った。

そんな私の思いなんかつゆ知らず、隣にいるジャスティンは
ラーメンが美味しかっただの、さっきの子が可愛かっただのと
話をしてきた。

”彼女はシャイだったね。照れて可愛かったよ”

私もシャイなんだけどね。
だけど私の場合、照れを通り越して、否定したり無反応になったりするから
それがジャスティンにとっては面白くないのかなと思った。

”どうしたの?ずっとさっきから黙り込んで”
「え?」
彼が心配して私の顔を覗き込んだ。
”え?あ、ちょっと考えてた”
”何を?”
”えっと・・・”
’あぁあ”

彼は合点がいったとでもいうように私を後ろから抱き締めると
”さっきの子にジェラシーを感じてるの?僕が可愛いなんて褒めたから”と言ってきた。
”ノー、ノー!”
すると彼が後ろから私の耳にキスをすると”正直に言いなよ。妬いてたんだろ?”と
悪戯っ子のような人を試すような甘く低い声で囁いてきた。
私は、その声に全身がゾワゾワっとして何も考えられなくなった。
すると彼は後ろから抱き締め私の首筋にキスをすると
「僕が愛してるのは君だけだよ」と囁いた。
私は彼の呪縛にかかったように彼の甘美な声や慣れたスキンシップに捕らわれ
身動きが出来ずそのまま目を瞑りどうにかなりそうになるのをひたすら耐えていた。

彼は私の身体をゆっくりと後ろに振り向かせ、お互い暫く見つめ合った。
すると彼の顔が近づきそのまま甘く濃厚なキスの嵐を私に降らした。

こんな所で・・・。
誰かが来たら見られちゃうよ・・・。

そう思っても声も出ないし、否定も出来ない。
今まで味わったことないような甘く激しいキスに私は立っているのもやっとだった。
”メープル・・・”
”ん、ジャスティン・・・”
キスを終え、彼が唇を離した時、私は寂しさを感じた。
だから至近距離で見下ろす彼に向かって
私は思わず”もう一回”とつぶやいた。
それに火が点いた彼は更に激しさを増して私にキスをした。
口、頬、首筋、耳元、私を欲望する彼の無遠慮なキスに
私は眩暈を起こし、身体が震え、そのまま立っていることも出来ず彼の胸に寄りかかった。

”大丈夫?”彼の笑い声が上から聞こえた。
これくらいでふらつく私をバカにしたような可愛がるような笑い方だった。
私が睨んだように見上げると彼は一瞬戯けた表情をしたがすぐに真剣な表情を作ると
”メープルが食べたい”と言ってきた。
私を抱擁して、今度は優しく私の頬にキスをすると”我慢出来ない”と甘えるように言った。

ずるいよ、そんなお願いされるような感じたで言われたら私。
私は決心すると彼の手を握り、手を繋ぐと私達はホテルに向かって歩き始めた。
< 38 / 86 >

この作品をシェア

pagetop