Sweet Hell

ひと夏のアバンチュール

程なくしてラブホテルに着いた。
薄暗い通路を進むと壁のディスプレイに表示された空き部屋を選択して押した。
小さな窓口から受付の人が声をかける。
「前払いです」という言葉に私は鞄から財布を取り出した。

ジャスティンはまだ学生だ。
ここは社会人の私が全額負担した方が良いだろうと思い、
お札を取り出そうとしたら彼が制した。

”僕が払うよ”
「え?でも・・・」
私が言うのも待たず彼はポケットから財布を取り出すと
一万円を取り出し受付の人に渡した。
彼はお釣りを受け取ると受付の人が
「こちらのカードで解錠してください。部屋は4階です。エレベーターはそちらに」と
案内をした。

彼はカードキーを受け取ると私の方を見た。
”あっちだって”
私はエレベーターの場所を指で示すと彼は理解したのか
その方に向かって歩き始めた。

”ジャスティン、待って!お金・・・”
せめて割り勘にしようとする私を止めるかのように
彼は私の財布を持つ手を押さえると”お金のことは気にしないで。僕に任せて”と
彼は言った。

申し訳ない気持ちはあったけど、これ以上説得しても拉致があかないと思ったので
私は財布を鞄に仕舞うと”ありがとう”と言った。

”問題ないよ”

彼がそう言った瞬間、待っていたエレベーターの扉が開いた。
彼が開くのボタンを押しながら”Lady First”と言って手を差し出し
私を先に乗せようとしたので私は思わず「お、オー。ソーリー」と言いながら慌てて乗った。
大抵先に男性が乗ってから私が乗っていたので初めてのことでまごついた。
彼がその後乗ると、閉まるボタンを押した。

扉が閉まった瞬間、彼は待てなかったのか
”メープル!”と呼ぶと私を強く抱き締め、熱いキスをしてきた。
「ん・・・ちょ・・・」

チン・・
”ジャスティン・・・着いたよ”

扉が開き、私は彼の手を軽く叩きながら
”行こうよ”と困った感じで言った。
彼はしぶしぶ”分かった”と言うと私の頭にキスをして
”行こう”と言った。

扉の前に着くと彼がカードキーを挿し込み、解錠した。
”おう!開いた。メープル、レディーファースト!”と言ったけど
私は、”ノー。ユー ファースト”と応えた。
なんとなく後ろからまた何かされたら怖いなと思ったから。

”OK、じゃぁ、先入るよ”と言って彼が中に入った。
私はその光景を見ながら
本当にここまで来てしまったんだなと思った。
後戻りは出来ない。けど、私は戻りたいとは思わなかった。
このまま彼に抱かれたいと思ったのだ。
恋人でも未来の旦那でもない彼に。
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