Sweet Hell
「おはようございます」

挨拶をしていつものように出勤して
いつものように仕事をする。
そう何も変わってない。
ジャスティンがいないということ以外、何も。

「ごめん、秋葉さん。私今手が回らないの。
本郷さんから頼まれた書類作成、お願いしても良い?」
そう秋葉さんに尋ねると彼女は少し落ち込んだ様子で
「わかりました」と言って書類を受け取った。

私は特に気にすることなく、みほの方を向くと
「ごめん、ちょっと昼休憩取れるか微妙だからみほ先に食べてて」と
声をかけた。

みほは、「了解」と言うと「ってか、楓、今日は妙に張り切ってない?」と
聞いてきた。

「え?」

「なんか、忙しそうにしてる」

「忙しそうじゃなくて忙しいのよ!見て分からない?」

「繁忙期でもないのに?」

彼女はからかうように笑った。

「まぁ、いいや。とりあえず昼になったら
いつもの場所で席取って待ってるよ」
そう言って彼女はチャイムと同時に席を立った。

忙しければジャスティンのことを考えなくて済む。
時間にゆとりが出来ると無意識に彼のことを思い出しそうで怖い。

あんなに優しかった彼が
あんなに私を愛してると言ってくれた彼が
私のたった一言でこんなにもあっさり終わるなんて
頭では分かっていても心がまだ現実を受け入れられなかった。

昼が終わる15分前になった。
私は急いでラウンジに向かうとみほが席で待っていた。
私のためにコーヒーとサンドイッチを用意してくれてた。

「ごめん、遅くなって!」

「いいのよ、ほら座って」

「うん」

私は彼女にお礼を言うとサンドイッチを頬張った。

「実はさ、楓に一応言っておこうかなと思ったことがあって」

「え?」私はサンドイッチを咥えながら上目遣いに彼女を見た。

「実は、秋葉さんと本郷さん別れたっぽいの」

「え~~~!?」

「楓、ちょっと声でかいよ!」

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