大きな青空の下で君を見つけた
私、死ぬの?



奥本先生に、そう伝えたかった。


けど、私は言葉より先に、身体が動いていた。



覚悟はできていたはずなのに、頭が真っ白になってしまった。




診察室から、逃げる様に私はその場から立ち去った。



「沙彩ちゃん!」



待合室で、突然掴まれた手首。



「離して。」



私は、掴まれた手を振り払った。



「沙彩ちゃん、ちゃんとこれからのことを聞いてほしい。ちょっと、もう1度診察室へ入ろう。」




奥本先生に、肩を支えられながらも診察室へ入った。




「沙彩ちゃん、心臓病って言ってもちゃんと治療すれば治ることもある。それに、命と直結しているとしても今すぐどうなるってことでもない。だから、沙彩ちゃんが悪化しないように俺は沙彩ちゃんの病態をちゃんと診ていきたい。」


私は気づいたら涙が溢れていた。



死ぬことが、自分にとってこんなに怖い物だと思っていなかった。



いつ死んでもいいって思っていたのに。



所詮、私は心が弱いんだ。



私の涙を、奥本先生の大きな手で拭ってくれた。



「一緒に、病気を治そう。沙彩ちゃんは、きっと乗り越えられるから。」



先生のまっすぐな瞳が、ほんの一瞬だけど私の冷え切った心を温めてくれているように感じた。




「先生…。よろしくお願いします。」




自分でも驚くほどに、この人には身を委ねても大丈夫な感じがした。



私は、そう頭を下げた。
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