ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
──あきくん、助けて。
髪の毛を握った手が暖かいものに包まれた。タクヤさんの手がわたしの右手を包み込んでいる。
「あゆのせいじゃない」
髪の毛を握っていた手の力が抜ける。
「嫁さんが浮気していたんだ」
“浮気していたんだ“
タクヤさんの言葉が何度も耳の中で勝手に繰り返される。
浮気?全く想像していないことだった。
え?あの奥さんが?奥さんが浮気するなんて想像できなかった。親子3人で仲良くいる姿を見ていたから余計に。
でも、それを言ったらタクヤさんも同じか。傍から見たら浮気しそうにない、家族を大事にしている人だもんね。人は見かけでは分からない。
「浮気っていうか本気みたいでさ。離婚届つきつけられた。その相手と一緒にいたいからって」
わたしの手を包んでいた手がゆっくりと離れる。
「家族は簡単にはバラバラにならないと思ってたんだけど、結構簡単に壊れてしまうんだな。不倫とか浮気とか、好きな人ができるっていうとなると」
ずっとわたしを見ていた視線は少し下に行き、何かを思い出すような表情をしている。それは悲しそうにも見えるし、落ち込んでいるようにも見える。