ワケありオンナとワケあり男子の共同生活


毎日聞いている声。姿を見なくても誰か分かってしまう。

頭が真っ白になる。誰よりも見られたくない人物にこの現場を見られた。

「あゆちゃんの彼氏?って、彼氏はいないんだっけ。弟?」

さっきまでわたしを見なかったカオルが上半身を右に半回転してこちら側に向けて聞いてきた。カオルの背中でさっきまで見えなかった家の外にいる人の姿がハッキリ見えた。

「……あゆさん」

「……」

やっぱりあきくんだ。思考回路が停止してしまって何も言えない。

視線をあきくんの靴に落とした。彼の顔をじっと見つめることができない。

ずっとあきくんに内緒でカオルを入れていたことに対して、罪悪感がずっとあった。今はその罪悪感と、警察に万引きが見つかった時のような焦り、それしかない。

何か言わないと。

“カオルと終わらせるために会っていた"

"彼とは今日は本当に何もない"

思いつく言葉はある。でも、これらの言葉はカオルとの関係が今まであったことを自分から公表するようなものだ。


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