ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
「まあ、いいや。あゆちゃんバイバイ」
右手を顔の横に持ってきてヒラヒラさせて、ドアの前に立っていたあきくんの前を通り過ぎた。この時1度もわたしを見なかった。彼はそのまま階段の方へ行ってしまった。
カオルという壁がなくなり、あきくんと向かい合って立っている。
やっぱり気まずくてあきくんの目を見ることができない。
どうしてあきくんがここにいるんだろう。仕事じゃなかったのかな。なんで、このタイミングで帰ってきたんだろう。
「あきくん、仕事じゃないの?」
あきくんは玄関に入ってドアを閉めた。靴を脱ごうとはせず、その場に立っている。少し薄暗い玄関。さらに気分が落ち込んでくる。
「今日休みだよ。前のバイト先に顔を出していたんだよ」
「そう、なんだ」
休みだったんだ。昨日ちゃんとシフト聞いていればこんなことにはならなかった。
「あゆさん」
「何?」
「今の人、だれ?」
──心臓がバクバクしている。
「……友達だよ」
ぎこちないのは自分でも分かっていた。友達という言葉でごまかせないことは分かっていた。でも、今はこうするしかない。これしか思いつかない。