all Reset 【完全版】
トラックに追突される事故に遭ったにもかかわらず、軽い打撲程度で済んだ俺たちは、運良く翌日には病院を出ることが許された。
血相を変えた両親たちが病院にやって来て慌ただしいことにもなったけど、あれから亜希と会ってない俺たちは亜希の様子が気になって仕方なかった。
「さっき、白石さんも目を覚ましたって担当の看護師から聞いたわよ」
俺らを担当していた若い看護師がそう言っていた。
はやる気持ちを抑えながら亜希の病室へと足を運ぶ。
『白石 亜希様』
そう書かれている病室の前でドアに手を掛けたときだった。
自動ドアのように勝手に扉は開き、中から少し慌てた様子の三十代半ばくらいの看護師が出て来た。
俺たちを驚いた顔で見たものの、小走りで去っていく。
その看護師の後ろ姿を見送りながら横の良平は首を傾げていた。
病室には、太陽の眩しいほどの光が入り込んでいた。
中に入ると、ベッドの上で上半身を起こし、窓の外をぼんやり見ている亜希の姿があった。
「……亜希」
良平が声を掛けると、亜希は窓を見ていた顔をゆっくりとこっちに向けた。
額より少し上に巻かれている包帯が痛々しさを物語っている。
「……大丈夫か?」
何を言えばいいかわからず、俺はありふれた言葉を口にした。
大丈夫なわけがない。
亜希に会ったら、まずは謝ろう。
そう決めていた。
「ごめんな、こんなことになって……」
でも結局、そんなことしか出てこない。
もっと言うべきことはある。
でも、上手く言葉がまとまらない。
「だから、謝るなって。三人共無事なんだし、良かったじゃん。な、亜希?」
どうしても暗い顔になる俺に、良平はまた明るく振る舞う。
いつも通りの明るい声で、俺の肩をバシッと叩いた。
「でも」
「でもも何もないっつーの。大丈夫だって、亜希とか多分不死身だぜ?」
冗談半分で笑いを取るつもりの良平の一言。
いつもだったら、亜希がすぐ反応してくる。
でも……
何かが変だった。