狐の嫁入り
1章 狐の嫁入り
ポツ、ポツ、ポツポツポツ…





雨音が、どんどんと長い音に変わる。

頬に雫が垂れ落ちる。

私はそれを、じっと…耐えた。

服の繊維に雨粒が入り込む。

そして、服がどんどんと重さを増してゆく。


「このまま、、いっそ、、」


ボソりと独り言を呟いたが雨音で消える。

雨粒が大きくなり、それを眺めていたらそのひとは現れた。

『どうしたんだい?こんなに、濡れちゃあ風邪ひくよ?』

低い声。男の人。黒髪。紅い和傘。着物。眺めのまつげ。細めのキレ目。


「綺麗、、、な人」


と、ぼそっと呟いた。
あれ?自分にかかっていた雨がやんでいる。

ふぃっと、上を見ると和傘。鮮やかな紅色の和傘、、、こんなご世代に?
現代の人はほとんど和傘を持たない。持つとしても京都に行き和傘を購入した人、それか、コスプレか、舞妓さんぐらいであろう。

「なんで、、、、?」

頭がぼっーと、する中で話せているのかわからない。話せてるかな?


『お前さん、熱があるのかい?失礼…』


冷っとする大きな骨ばった手がおでこにあたっている。

気持ちいい…溶けちゃいそ、、、

『こりゃぁ、、、高熱だ、、聞こえるかい?お前さんは熱がでとるけど、今からどうしたい?』

「家は、、、嫌」

家は帰りたくない。あの檻に戻るほどの気力はない。

『そうかい、、じゃぁ、、ウチくるかい?』

うん。そう言ったのかの記憶はない。
でも、頷いたような気がした。


雨がやんだ。

『なんだい、狐の嫁入りかい。でも、なんで、この女子はこんな所に?』


まぁー、連れていくか、、あの屋敷に━━
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