元カレバンドDX
「あ、陽愛いいよ~。わたしにおごらせて」

「え!?いいよいいよ!払うって」

「いいっていいって。お給料出たばっかりだからさ。ね?」

 そう言って小巻は、お財布から1万円札を取り出すと、手際よく会計を済ませた。

 あたしは、必要なくなった自分のお財布をバックの中に閉まって、小巻に「ありがとう」と言った。

 お店の外に出ると、生ぬるい空気があたしを包んで、みじめな気持ちがあらわになる。

 小巻と駅まで一緒に歩きながら他愛もない会話をして、改札口で「またね」と言って別れた。

 ひとりになって思う。

 小巻がすごく輝いて見えて、なんだか自分が情けないよ。

 ちゃんと仕事をして、彼氏とも順調で、しっかりとお給料も貰えて……

 今のあたしには、なにひとつだってない。

 それに小巻の嘘はわかっていた。

 前に給料日を教えてくれたことあったよね?

 お給料が出たばかりなんてわかりやすい嘘をついて、あたしを騙せるとでも思ったのだろうか。

 だからこそ、あたしに気を遣う小巻の優しさが痛かった。

 あたしは、親友に心配をかけるほど落ちぶれている?

 ねぇ、あたしってかわいそう?
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