元カレバンドDX
「陽愛ちゃんも仕事帰り~?」

「ううん、大学の時の友達と会ってたんだ」

「そうなんだ~仕事はなにしてるの~?」

 なにも言わないあたしに、翔子は続けて質問をする。

「あ、まだ学生とか~?」

「……なんにもしてないかな」

「へ?」

「あたしね、歌手を目指してるの」

 胸を張っては言えなかったけれど、嘘はつきたくなかった。

「へ~そういう人初めて会った~がんばってね~」

 翔子の言葉がちくりとあたしを刺激して、苦笑いさえできなかった。

 次の交差点で、あたしと翔子はバイバイをして別れた。

 もう2度と会うことはないと思った。

 せっかく息抜きができるいい機会だと思っていたのに、こんな哀れな気持ちになるなんて思いもよらなかった。

 小巻や翔子の顔を思い出すと卑屈になる。見ないようにしていた将来の不安を突き付けられたようで苦しい。

 あたしは、このまま夢を追っていいの?

 周りを見習ってちゃんと就職すべきなの?

 誰が反対しても、自分だけは信じようと思っていた“自分”を見失いそうになって怖かった。

 あたしは、歌手になるんだよね……?
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