元カレバンドDX
 名刺を受け取ると、「Stone Smooth Records」のロゴが輝いて見えた。

 丸山と名乗る男性は、お母さんが持ってきたお茶をすすり、あたしを見てにっこりと微笑んだ。

「今日は急にすみませんね」

「いえ、全然大丈夫です!」

 あたしは正座をして、グーにした手をひざの上に置いた。

「やっと見つけることができて嬉しいです」

 そう穏やかに話す丸山は、小さい丸フレームのメガネをかけているせいか、なんだかタヌキみたいで可愛い印象だった。

 年は、40代後半くらいだろうか。

 名刺を見る限り、役職は上の方みたいだ。

「今、社内で、次世代を担う新しいバンドをつくろうという動きがあるのですが、僕は個人的に女性ボーカルのバンドをつくりたいなと思っているんです」

「はぁ……」

「僕は、90年代くらいのUKロックシーンがとても好きでね。特に女性ボーカルものは非常にかっこいい」

「あ、あたしも好きです!!」

“UKロック”という言葉に反応し、思わず身を乗り出すと、「そうだと思いました」と、丸山は優しく笑った。

「そこで、あなたにそのバンドの中心となる女性ボーカルをやってもらえないかと思って、今日は直接会いに来ました」

 丸山の言葉に、脈が速くなるのを感じる。

「失礼ですが、今はなにをされているんですか?」
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