最期の時間を君と共に
「お邪魔しまーす」

「いらっしゃい」

誓の手にはお煎餅らしきものが握られている。何の為の物かなんて、聞かなくたって分かる。

「これ、リイチさんに渡していいか?」

「うん、もちろんだよ。いつもいつもありがとうね」

リイチ、とは私のお父さんの名前。誓は家に来る度、こうやってお父さんに会ってくれるんだ。向こうから見えているのかは分からないけど、声は届いてるよね。

「じゃ、リイチさんとこ行ってくるな」

誓は隣の部屋に行った。亡くなってしまったけれど、それでも私の家族だと認めてもらえているような気がして嬉しいんだ。自然と顔が綻ぶのが分かる。
気をとりなおし、火をつける。じゅうじゅうと焼ける感じが好きだ。

「何度見てもかっこいいよな、リイチさん」

後方から声がする。振り返らずに私は喋る。

「私も自分のお父さんながらイケメンだと思う」
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